伝蔵ら独り立ちし、寅右衛門大工の弟子となる

カウカハツの領地四里程の外れに村落があり、そこは、いつも扶持米をもらいに行くところである。
また、その領地にカウカハツの親類がおり、農業を生業としているものがいた。伝蔵らは時々は彼の家に行き、厨房で炊事人を助けるなどして、養育してもらった恩を返した。

この地に滞在することは一年程になり、この地の言語なども簡単なことは分かるようになったので、
「人に雇われ、それで生活したい。」
と主人にも話したが、
「長官から長く住まわせよとの命令より命令が出ているから、心配をせず、このまま暮らしなさい。」
と、聞き入れてもらえない。

そこで更につてを頼り、長官へ直々に訴えたところ、その許しを得た。
以前、医業をしていたダッタチョーヂは今は官吏となっており、オプニカウカと名前を変え、時々我々に施しをしてくれていていた。様々な方面に手を尽くしてくれ、四人はそれぞれ別れて住むこととなった。

伝蔵はミス・クーケ(ミシクーケ)という、アメリカから来た講師に仕え、(貴人を呼ぶとき、ミシ某という。ミシ、メシテなどはこの地の尊称でクーケはその名である)
重助、五右衛門はオアニカウカに仕えた。
五右衛門はまだ年少であり、仕事をさせることが出来ないので、兄を保養することを命じられた。

寅右衛門は大工に雇われ、その技を学んだ。


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