マン、キャリフォネの金山で大いに稼ぐ

サクラメントを出発し、ある者は馬で、あるものは輿に乗っていく。馬が通行できないところは歩く。このような難所を五日程歩くと、高い山の大半に雪が覆うところがある。名をシェラネバダ(ヱヱンナ)という。
山中に三つの大きな河があり、それぞれノヲス、シヲウス、メルルという。
そのノヲスの管理、銀座、金座はみな合衆国のものである。
そこで、雇われ夫となって、道具をもって金鉱に入ることにした。

普段は巨大な坑道を掘って、坑道ごとに金を取るというのだが、盛夏の頃のことであり、坑道の暑さが耐え難いので、多くの人は水際で掘っているという。
四尺あまり掘ると、金鉱がある。また、土砂の中に混じっている砂金がある。
これを川の水で洗い分けるが、そこには秘訣があるという。金を除くとその他に、銀、銅、鉛、錫の数種がある。これを取るものもまた少なくない。
この地は金を産出することがことのほか多いので、年をおかず、月をおかず、一日一日新たに売春宿ができ、市場は山海の美味を売り、まことに繁華である。
しかし、一つ困ったことがある。
ならず者が言いがかりをつけて、人の財産を奪い取ったり、ひどい場合は銃殺することさえあり、暴虐なことを止めることが出来ないものもすこぶる多い
(ただし、最近ましになったと言う人もある)

雇われて三十日ばかりたつ間に、銀百八十枚を得た。これで自らの堀器を買って、雇い主に別れを告げた。
これ以降は、旅館に泊まり、自分で掘ることになった。
金を金座に直接出すと、一日で銀二十枚から二十五枚を得る。しかし、何も取れない日もあったりで、七十数日で銀六百枚を得た。
八月上旬に金山を出発した。

万次郎はこのように莫大な金を得ることは何度もするべきことではない。この金をもってすれば、早くオアフに行って、船に乗って帰国することも難しいことではないと一人確信した。

サクラメントからシチンボールにのり、カリフォルニアに到着し、オアフに渡るため船便を探していると、ニューヨーク船でイライザ(エライシャ)という船が見つかった。
その大きさは普通の捕鯨船の倍もある。それがオアフに出港すると聞いて、乗せてくれるように頼んだ。
ここで乗船し、舵を南西にとり十八日後オアフに到着した。ユンナの家に入って、運賃二十五枚を船に支払った。

漂巽紀畧 第三巻終わり

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