伝蔵、五右衛門、南洋に珍しきものを見る
オアホーを過ぎ、舵を西南西にとって走ること数十日、ニューギニア(メーギネ)からオーストラリア(ヲーシツレリア)の地に向かった。
それから、一つの島についた。この島は砂地で少しの草が生えている。芭蕉のような椰子が樹上に密生し、椰子はシュロのように枝がなく、葉は蒲の穂を束ねたようで、その実の大きいことは瓜のようで、葉の間に垂れ下がっている。
実の外には粗い外皮があり、シュロの皮のようで、中に固い殻がある。人の顔に似たところがあり、両目と口があるようだ。殻のうちに肉と液がある。肉は胡桃のようで、液は乳のようである。
これを食べると冷たいのに元気になり、かつその甘いことは耐え難いほどだ。しかしその液の量は三、四合ほどもあり、一時にこれを飲み干すことは出来ない。
島の人達は裸で、女は椰子の葉をつづり、僅かに性器の前を覆い、髪は後ろは首のあたりに切り、前の髭は抜いている。男女の別は性器を見るまで区別することは難しい。
地に穴を開け、上に椰子の葉を編みかけ、椰子の葉を以てかくし、その中に住んでいる。
鍋釜の類は持たず、海草を串に刺し、火であぶり、それを食べ、あるいは椰子の液を飲む。だから人はみな椰子油の臭いがする。(女は椰子の液を顔、及び全体に塗ることが尊ばれる。油で光らせるよう何度も塗るのがこの地の化粧である)
伝蔵達が乗った船が浜の外に近づいたとき、島の人達は、男女を問わず、椰子を切りその皮を編んだ小舟に乗り、巨船を目がけて漕ぎ寄せてきた。
程なく近づくと、皆争って船中に踊り入った。
船の人達は彼らに煙草を少し与え、裸の女を部屋に引き入れた。
中でも元気のよい水夫は、他の者に見られることを隠すことなく女を抱いた。
島の裸の男達は傍で煙草をすいながら、この様子を見て、陰茎を屹立させて、亀頭が跳ね返る者もいた。
水夫たちはそれを指さして笑うが、彼らはこれを少しも恥ずかしがるようでもない。
みんなの前で女を抱いた者のことが終わると、裸の女の方は、少しは恥ずかしいことが分かると見えて、足を合わせて、手でへそ下を覆う。
しかし、もし、それを見せろと言われれば、少し足を開くなど、言われるままに様々に猥褻なことをし、煙草やその他の食べ物を乞うのがこの地の習俗であるようだ。
ある日、伝蔵は上陸したとき、汚れた着物と垢にまみれてはいるが、この島の人達とは少し異なる人に出会った。
よく見ると、オアホーで面識のあった人であったので、不思議に思って尋ねると、彼が言うには、
「以前、罪を犯し、この島に放逐された。島人の暮らしは獣のようであり、耕作をすることを知らない。私は、山際にある土地にいつき、芋や黍を栽培している。椰子の木を穿って尿坑を作り、土人の大小便を集めて肥沃にしようとしているのだ。」
とても憐れな様子で語ったので、伝蔵は着ている衣を脱ぎ、彼のために与えた。
この辺りの島は椰子だけでなく、ブレツスル(パンノキ)という名の木がある。穀類や芋のようにこれを食用にする。
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