漂巽紀畧 巻之四
漂巽紀畧第四巻は、三人の帰国の様子が描かれる。
カリフォルニアの金山で帰国費用を稼いだ万次郎はオアフに立ち寄り、伝蔵、五右衛門、寅右衛門に帰国計画を持ちかける。
寅右衛門は彼の地に留まることを選び、思いがけず、三人での帰国することとなった。
たまたま、三度目の漂流民との出会いがあり、共に帰国をはかるが、またしてもその思いを果たすことは出来なかった。
結局、万次郎たちは三人だけで帰国を決行すし、琉球国摩文仁に上陸した。
ついに帰国を果たした彼らを待っていたのは、長い長い取り調べだった。
琉球、薩摩、長崎、土佐と護送され、その都度詮議をうける。
結局、上陸からおよそ二年後、ようやく故郷に帰ることが許されたのである。
漂民の帰国の多くは、清国から長崎を経由する場合が多いが、万次郎はボートにのって上陸する方法をとった。
紀州の寅吉たちとともに帰国しなくても、万次郎には必ず帰国できるという成算があったに違いない。
清国を経由せず、ボートで上陸することはまた、多くの文物を持ち込むためには、一番確実な方法だったであろう。
この時持ち帰った品々は尋問を長引かせる原因にもなったが、万次郎が望んだとおり、日本を変えていく力となっていったのである。
全編を通じ、漂流民たちが互いの境遇を思いやり、帰国に力を尽くす様は胸に迫る。
極限を生き抜いた者たちが持つ連帯感だろうか。
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