漂巽紀畧 巻之一
漂巽紀畧第一巻は、宇佐からの出帆、遭難、鳥島漂着。ホーランド号に救助され、ハワイに寄港した後、万次郎を本国に連れて行きたいという船長の申し出を、筆之丞が承諾するまでが描かれている。
漂流の場面では、船頭筆之丞が転覆を防ぐために帆柱を切り、シーアンカーを作る様子が語られ、船頭としての職務を全うしようとする様が読み取れる。
島に着いてからの生活は、作者はさほど興味を惹かれなかったのか、それほど詳しくは描かれていない。
救助されてから、ハワイに至るまでの間では、当時の捕鯨の様子が説明されるが、それに比較して、彼らがどのように日々を過ごしたかについては少しもふれられておらず、食べ物に関する記述があるのみである。同様に、万次郎がアメリカに渡るに至るのも唐突で、そこに至る過程の説明もない。
作者の興味は五人の心のありようにはないようである。
現代の我々から見れば、その興味はサバイバル生活にあるのだが、彼らの苦労や心のうつろいより、遠い異国の珍しい風物や、政治体制への興味が勝ったということだろうか。
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